濱中大作
男は世界の残滓の中で目覚める。バラバラになった異空のまにまに。
おや?誰かが呼んでいるような気がする。
世界は終わったがまた再び始まるだろう。だがリロードされるまでの間に、なぜに世界が滅んだのかという検証が何処かの誰かによって行われるだろう。そう、これまでに何度も繰り返されてきたように。
世界の破滅は必ずしも、つねに強者によって行われるというわけではなく、時に弱者が水晶が光を屈折させバラバラにしてしまうように、その精神の屈曲と様々な現象の混交によって招来される不幸な偶然かもしれない。
1人の人間がいて、この世に立つ時、必要なのは重力に逆らう筋力。そして意気地、すなわちプライドであるとするならば、その自己を推進元となるのは経験によって培われたその人独自の知見であったり、ささいな勘所であろう。この微妙な匙加減こそがユニークとなり、その人を誇りある人とならしめる。
ではそのユニークが吸われるように奪われ、上位互換の機械にその座を追われた時、その人間は何を拠り所にして世に立つのだろうか。「人間は機械には出来ない文化芸術を行うことによって真のユニークを獲得するのです」と機械にうそぶかれた時、彼は諾々と下るのだろうか?
そしてその先にあるものは?
1人の清掃夫は箒を手に、自分の内面に宿る追憶を具に視る。
プレイヤーは精神の仮想検証空間の中を、習い性であった清掃術を行いながら徘徊する。浮遊しているものを箒でどかしかわしながら過去の残影を追う。特にエンディングなどなく、落ちているオブジェクトや情報の断片を元に過去をそれぞれが類推する。